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「江戸時代の懐石とガラス器」 オンライン研究会

2022.07.09イベントレポート

日本ガラス工芸学会主催の第61回オンライン研究会「江戸時代の懐石とガラス器」が2022年7月9日(土)の13:30 -15:00に開催されました。

本研究会はMIHO MUSEUMで7月9日から8月14日まで開催されている特別展「懐石の器」にあわせ,同館の東容子様から懐石についてのご紹介に加え,茶事の懐石におけるガラス器の使用例をご紹介いただきました。今回の研究会は日本ガラス工芸学会の会員以外にも公開され,50名の参加がありました。

 懐石とはわび茶会で供される食事のことですが,戦でいつ命を失うかわからない武家をもてなす場ともなり,一般的な宴会料理で重視される豪華さなどの無駄なものをすべてそぎ落とし,亭主のもてなしの心が最も簡潔な形でお客様に伝えられることを目指したものとのことです。懐石では亭主が季節の料理をお客様の顔をみながら提供してゆく中で,器との組み合わせが重視され,器の選定とともに器に対する鑑賞眼が懐石を通して非常に深まっていったことをご紹介いただきました。
今回の研究会では懐石の献立と器が記された茶会記にもとづき,当時の懐石の流れをご紹介されました。日本料理では盛り付けを非常に大事にし,料理に対する器の位置付けは料理の衣装とされ,器にふさわしい盛り付けをした場合に,料理も器も引き立つ相乗効果が生まれることから,その場に最も適したものになるよう配慮されていたそうです。
 懐石で用いられる器は一般に陶磁器や漆器が中心となりますが,透明で独特な外観を持つガラスは,特に夏の季節に清涼感をもたらし,極めて重要な役割を果たしたようです。今回は冒険的な取り組みとして実際の懐石料理を器に盛りつけた様子を写真で示していただき懐石独特の料理の盛り方も見せていただくことができました。

切子角形ガラス三段重
江戸時代後期-明治時代初期 19世紀
MIHO MUSEUM蔵
型吹き青緑色葡萄文鉢 
江戸時代 18世紀
瓶泥舎びいどろ・ぎやまん・ガラス美術館 蔵

 実施にあたっては慎重に検討や配慮が行われ,盛り付けの際には充分に水を吸わせた陶器を使うなど工夫を施し,破損や汚れを生じないよう細心の注意が払われたとのこと。撮影後に料理を乗せた痕が残ったように見え,肝を冷やしたものの乾燥後には跡が消え,無事で安堵されたことなどの後日談もお聞かせいただき,大変興味深い研究会でした。

切子紫色蓋茶碗 
江戸時代後期-明治時代初期 19世紀
MIHO MUSEUM蔵

(理・芸・地域社会融合分科会・山崎)

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